出雲日御碕灯台

精神保健福祉士(PSW)とは

 精神保健福祉士とは、1997年に誕生した精神保健福祉領域のソーシャルワーカーの国家資格です。

 21世紀はこころの時代と言われています。多様な価値観が錯綜する時代にあって、こころのあり様は私たちがもっとも関心を寄せる問題の一つとなっています。

 特に、わが国では、たまたまこころの病を負ったことで、さまざまな障害を抱えた人々(精神障害者)に対する社会復帰や社会参加支援の取り組みは、先進諸国の中で制度的に著しく立ち遅れた状況が長年続いていました。近年になり、関係法の改正などにより、ようやく精神障害者も私たちと同じ一市民として地域社会で暮らすための基盤整備が図られることとなりました。

 精神保健福祉士は、精神科ソーシャルワーカー(PSW:Psychiatric Social Worker)という名称で1950年代より精神科医療機関を中心に医療チームの一員として導入された歴史のある専門職です。社会福祉学を学問的基盤として、精神障害者の抱える生活問題や社会問題の解決のための援助や、社会参加に向けての支援活動を通して、その人らしいライフスタイルの獲得を目標としています。

 さらに、高ストレス社会といわれる現代にあって、広く国民の精神保健保持に資するために、医療、保健、そして福祉にまたがる領域で活躍する精神保健福祉士の役割はますます重要になってきています。

 

精神保健福祉士の仕事

◇医療機関◇

 医療機関で精神保健福祉士が担う業務は、単科の精神科病院、総合病院の精神科、精神科診療所、医療機関併設のデイケアなど、配属先によって違います。しかし、精神障害者の生活を支援する立場であり、医療と地域生活の橋渡しをすること、常に権利擁護の視点を持つこと、医療機関にあっても治療を担うのではないことは共通しています。

 これらの活動に関連して、主治医、看護師、作業療法士や臨床心理士など、機関内の他職種とのチーム医療を展開します。精神保健福祉士法には他職種との連携を保つことが義務づけられています(精神保健福祉士法第41条)。

 なお、精神保健福祉士は医療職ではありませんので、医師の指示によって業務を行うものではありません。ただし、「主治医がいれば、その指導を受けること」も精神保健福祉士の義務として定められています(同法第41条第2項)。つまり、主治医の意見を聞き、指導を受けますが、精神保健福祉士として独自の専門的な視点に基づく判断と、それによる支援を行う職種となります。また、病院の外の他機関との連携による援助活動を展開する視点も必要です。

◇さまざまな生活支援サービス◇

 障害者総合支援法上の障害福祉サービス等事業所では、その設置目的によって精神保健福祉士の業務も幅があります。

 日常生活訓練をする事業所では、家事などの具体的な基本動作を一緒に行い、助言します。就労前訓練や作業を行う目的の施設では、作業を通して社会参加することを支援します。また就労前のトレーニングや、実際の就職活動に関する助言、職場への定着のための支援等を行います。

 相談支援事業所や地域活動支援センター等の地域生活の支援を主目的とする事業所では、利用者に、電話や対面、訪問による相談や日常生活にかかわる各種サービスを提供します。また各種情報の発信や居場所提供も行います。関係機関相互の連携の中心となり、ネットワークを活用して精神障害者のよりよい生活を支援する立場でもあり、ボランティアの養成や身体・知的障害者や高齢者、児童など地域住民を幅広く対象にすることもあります。

 2006年の「障害者自立支援法」の施行、そして2012年4月の障害者総合支援法の施行により、現在は精神障害者の支援も他の障害や難病と同じサービス提供体系に位置づけられています。しかし、精神障害者も地域で生活する一人の人であり、その生活がより豊かなものとなるように精神保健福祉士の立場で支援するという視点は共通しています。

◇福祉行政機関◇

 行政機関では、法律に基づいた各種支援事業や手続きの実施を担うほか、今後の地域における精神保健福祉の充実発展のために、現状分析や将来を見通した計画立案などにも関与します。また精神障害者の生活支援のために、関係機関のネットワークを作るコーディネートや就労支援事業、地域移行支援活動、地域住民への普及啓発活動などの企画、実施とそのための調整なども担当します。

◇司法施設◇

 「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った精神障害者の医療及び観察に関する法律」(2003年制定)による新しいシステムに基づく役割です。社会復帰調整官や精神保健参与員などの多くは、その期待される機能から精神保健福祉士が活躍しています。本法に基づく指定医療機関では、専従の精神保健福祉士がチーム医療の一員として社会復帰プログラムなどの業務を担います。また、矯正施設においても精神保健福祉士の配置が徐々に進んでいます。

◇その他◇

 介護保険施設や一部の地域包括支援センターなどでは、施設基準に定めはありませんが、精神保健福祉士を配置して利用者やその家族の相談支援、生活支援を行っています。

 また、常時勤務の例は少ないですが、教育現場のメンタルヘルスに関する相談援助を行うスクールソーシャルワーカーや、職場でのストレスやうつ病対策、職場復帰のための支援などを行う企業内や外部支援機関の精神保健福祉士が活躍を始めているほか、ハローワークでも精神障害者雇用トータルサポーターとして、精神保健福祉士が就労を希望する精神障害者の相談や企業の意識啓発などを行っています。

 教育機関では、精神保健福祉士養成課程での教育と、精神保健福祉に関する各種調査研究活動を行います。学問的理論と現場の実践や本音などを結びつけること、日本の精神保健福祉全体の向上に役立つような研究報告も行います。また各職場の精神保健福祉士も「精神保健福祉援助実習」の現場指導者として、教育・養成に携わります。

 また、常勤の職場を持ちながら、委嘱を受けて特定の会議等に継続参加する業務もあります。たとえば、都道府県・指定都市に設置される精神医療審査会や、市町村が行う障害者総合支援法下での障害程度区分認定審査会、社会福祉協議会の地域福祉権利擁護事業や運営適正化委員会への参加などです。

 

(日本精神保健福祉士協会HPより引用)